公正証書遺言は高くつくのか

公正証書遺言は費用がそれなりにかかりますが、これは高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか?

とても難しい質問ですが、遺言をする方が何を重視するかによるといえるでしょう。費用や手軽さを最優先に考える場合は「高い」となるでしょうし、遺言の実現や安心感を重視すれば「安い」といえるのではないでしょうか。


公正証書遺言は手間も費用もかかる?

公正証書遺言は自筆証書遺言と違い、公証人との打合わせ・証人の確保などが必要で、公証人に手数料を払う必要があります。また証人が必要となるので、自筆証書遺言と違い誰にも知られずに作成するということはできません。
公証人に支払う手数料は多くは10万円以下ですが、相続財産や相続人が多い場合は10万円以上になることもありますし、遺言者が病身で公証人に出張してもらうような場合はさらに出張費もかかります。

紙と書くものとハンコがあれば作れる自筆証書遺言と比較すると、「手間はかかるし、なんて高くつくんだ」と思われるのも不思議ではありません。
実際僕も公正証書遺言の費用について説明していると、「高いなぁ」と率直な感想を聞くことも、少なくありません。

しかし遺言書作成については、「高い安い」は単に作成時の費用のみで語るべきではありません。

安心感という、替えがきかない価値

自筆証書遺言は確かに紙と書くものとハンコがあれば作れます。ですが、専門家にチェックを依頼したような場合を除き、方式が法に従ったものか、内容が適切かについて確認する方法はなく、遺言者としてはその点について不安を抱えたままの状態になります。

また、自筆証書遺言は破棄隠匿・内容改竄の危険があります。それそのものについての心配ももちろんあるのですが、この問題は違う方向から見ると、自筆証書遺言は相続人間で、「偽造ではないか?本当に本人が書いたのか?」との争いが起き易いことを意味しているといえます。
実際に僕の地元である京都でも、そういった内容で一躍有名になった事件がありました。偽造であったかどうかはともかく、2通目の遺言書が公正証書遺言であったなら、問題はもう少しシンプルなものになっていたでしょう。

どこかに不安感を残したままの状態で過ごすことが精神衛生上、どれだけ影響があるかは人それぞれでしょうが、公正証書遺言か自筆証書遺言かを選択される際にはぜひとも考慮していただきたいポイントです。

「作成時」だけで語れないコストや手間

公正証書遺言は自筆証書遺言や秘密証書遺言と違って、検認手続きというかなり面倒な手続きが必要ないというのはよく言われていることです。

また、自筆証書遺言の場合、保管については自分で管理したり他人に管理を任せたりすることになりますが、自分で管理すれば保管費用はかかりませんが、保管場所を失念してしまったり、何かに紛れてしまうことはよくありますし、破棄隠匿・内容改竄の危険も無視できないのは先述のとおりです。

しかし他人に管理を任せる場合、多くは専門の業者でしょうから無料というわけにはいきませんので、コストはかかりつづけることになります。

そしてあまり考えたくはないですが、遺言が無効であったりした場合の損失です。遺言が無効であったり偽造が疑われるような事態になり、相続人間で争いが起きた場合、その損失額は遺言作成費用の比ではない事が多いですし、相続人間に残る感情的なしこりはコストや手間などで語れるレベルではありません。

このようなことから遺言のコストや手間を作成時だけで語るのはナンセンスであると思います。

このギモンの解説は

行政書士 勝見功一
行政書士 勝見功一
京都市上京区で申請取次行政書士をしています。
相続・遺言手続きの情報を中心に、情報の提供をしています。
よろしくお願いします。

お気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせは
☎ : 075-441-3307
mobile : 080-1405-7023

受付時間 9:00〜17:00
休業日 土日祝(対応あり)