【相続の疑問】相続登記の義務化とは

相続登記が義務になるとのことですが、いつからそうなるのですか?

2024年度から施行される見通しであり、相続登記義務化はそう遠い話とは言えない状況です。
内容としては相続登記や住所氏名の変更登記を義務化し、登記しない場合に罰則(過料)を設けることなどが予定されています。

相続登記の義務化

2021年4月21日、参院本会議で改正不動産登記法と改正民法、新法の相続土地国庫帰属法が全会一致により可決、成立しました。
法案の成立により相続登記義務化などの新制度は2024年度から施行される見通しであり、相続登記義務化が実施されるのはそう遠い話とは言えない状況です。

新制度の概要は

  • 相続登記や住所氏名の変更登記を義務化し、登記しない場合に罰則(過料)を設ける

相続登記は相続人が相続・遺贈で不動産取得を知ってから3年以内に、住所氏名の変更登記は変更があった日から2年以内に登記申請しないと罰則相続登記は10万円以下、住所氏名の変更登記は5万円以下の「過料」)の対象になります。
(住所氏名の変更登記については施行がやや遅い予定のようです)

なお、「過料」というのは「罰金」とは違って刑罰ではない軽めの行政からの制裁というところです。

制度の施行される日

同じ時に決まった制度であっても制度の内容や準備状況などが違うため、必ずしも同じ時期に施行されるわけではありません。

  • 相続登記義務化は法施行前の相続不動産にも適用がある

多くの場合法律の適用があるのは法律が施行された後に適用対象となる事が起きた場合のもので、今回の場合だと施行後に起きた相続についてのみ義務化や罰則の適用がありそうですが、相続登記義務化については法施行前の相続にも適用される方向です(附則第5条6項参照)。
そうでないと今回改正した問題解決にならないと考えられるためでしょう。

そのため、義務化前からすでにある相続登記の済んでいない不動産についても対応が必要になるということです。

  • 相続登記義務化と一緒に相続人申告登記(仮称)などの新制度が導入される

義務や罰則だけ増えるのはあまりよろしくありませんので、相続登記義務化にあたっての負担を軽減したり、相続関係の登記をしやすくする制度改正、さらには土地の所有権放棄制度の創設まで予定されています。
相続人申告登記(仮称)というのは相続した不動産をどう分けるか決まらなくて相続登記できない場合に相続人は誰々ですですと法務局に申告をすれば相続登記をしなくても(とりあえず)よくなる制度です

とりあえず、ですから誰が相続不動産を取得するか決まったら3年以内に登記しないといけないのは変わりません

それではそれぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

相続登記義務化に伴う改正の中身とその対応

相続登記義務化以降、不動産の相続が起きた!その時どうすれば

相続登記義務化後不動産の相続が起きた場合

  1. 3年以内に遺産分割して相続登記をする
  2. 3年以内に遺産分割出来ない場合は法定相続分による相続登記をするか、相続人申告登記(仮称)をする

上記1か2の対応をしないと罰則(10万円以下の過料)の対象となります(相続放棄した場合を除く)。
さらに2の対応をとった場合、その後に遺産分割協議がまとまって相続で不動産を取得した相続人が決まった場合はそれから3年以内に登記しておかないと、また過料の対象になります。

相続人申告登記(仮称)をした場合でも、相続登記義務を一旦免れただけであることには注意が必要でしょう。

相続登記義務化前の相続不動産にも適用がある

法律による新たな制度ができた場合、基本的にはその法律の適用があるのは法律が施行された後のものについてである場合が多いですが、今回の相続登記義務化については施行前の相続にも適用される方向ですので(附則第5条6項参照)義務化前に相続が起きたが放置していた不動産についても対応が必要になる、ということになります。

3年以内というのはいつからなのか

3年以内に相続登記をしなければならなくなるとして、その「3年」とはいつから3年なのかというと

  1. 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日
  2. 改正法の施行日

の1または2のどちらか遅い日から3年とされています(附則第5条6項参照)。

1が少しわかりにくいかもしれませんが、自分が相続人になる方(両親などが一般的ですね)の死亡を知り、その方の所有していた不動産を自分が相続できる立場だと知った時です。
一般的にはすでに所有不動産について知っていた場合(自宅の土地など)は被相続人(親)が亡くなったことを知ったとき、どこかの山林を所持していたなど知らない不動産が存在したときはその不動産の存在を知ったとき、といったところでしょう。

改正法の施行日以後の相続については基本的に「3年」とは上記1のようになります。

法施行前発生の相続の場合

法施行前にすでに発生していた相続の場合、基本的には2の改正法の施行日から3年になると思われますが、時折すべての不動産を把握しきれていない場合があり、改正法の施行日より不動産を把握できた日が遅い場合などは把握できた日から3年となる場合が考えられると思われます。

さて相続登記が義務化される一方、新たに義務が課されるだけでは負担感が大きいのでそれに対応して便利になる(かもしれない)制度、そして法務局が不動産の所有者の情報を把握しやすくする制度なども創設されるようですのでそちらもあわせて紹介していきます。

相続登記義務化と共に導入される予定の制度

遺贈などの登記手続きの簡略化

遺贈の登記が相続人に対する遺贈に限り、遺贈を受けた相続人が単独で登記申請できるように簡略化されます。
ここでは詳しいことは省きますが、現在は遺贈の登記は相続人への遺贈であっても共同申請で手続きに面倒なところがありました。(単独申請と共同申請では面倒さがかなり違います)

他にも一旦法定相続分で相続登記がされた場合においてその後遺産分割協議や相続放棄などで更正登記を行う場合について登記権利者が単独で登記申請できるように簡略化されることになります。

法務局による所有者情報取得および職権登記

不動産取得時にこれまでの氏名、住所だけでなく、生年月日等の情報の提供が必要になります(生年月日は公示されない)。
法務局の登記官が、住基ネット又は商業・法人登記システムから所有者の氏名又は名称及び住所の変更情報を取得して職権で住所、氏名などの変更登記することができるようになりますが、内容が内容なので、所有者が個人であるときは本人からの申出を必要とするようです。

所有不動産記録証明書の発行

被相続人の所有不動産については全部把握できていない場合も多いですが、現在は市区町村役場で名寄帳というその人が持っている固定資産税が課税されている不動産の一覧を取得して調査することが一般的です。
ただ名寄帳に記載があるのは固定資産税の課税がある不動産だけですので私道であるとか山林であったりなどの非課税の不動産については 記載されていませんので結局登記を調べる必要があることが多かったのです。
そこで法務局が死亡者名義の不動産の一覧を発行する制度が創設されます。

特別受益と寄与分の期限導入

特別受益と寄与分の主張に10年の期限が導入されます。(特別受益と寄与分についてはまた別のところで説明します)

遺産分割協議自体に10年の期間制限が設けられるのかとの見方もありましたが、遺産分割協議自体は10年を経過しても今まで通り行うことができます。
特別受益や寄与分がある場合には早めに主張するようにさせ、遺産分割協議をなるべく早期に進行させて相続登記の促進を図りたい趣旨でしょうか。

ただ、注意が必要なのは10年が経過して特別受益と寄与分の主張ができなくなった場合は法定相続分がベースの遺産分割が基本とはなりますが、特別受益と寄与分を考慮した内容で相続人間で遺産分割協議をまとめることはできるということです。考慮した内容で遺産分割をしてはいけないということではありません。

土地の所有権を放棄する制度の創設

相続登記を義務化してもこんな土地いらないなぁ…ということも十分考えられるので、土地所有権を放棄して国に帰属させる制度が創設されます。
ただ放棄できるのは、相続又は遺贈で土地の所有権の全部又は一部を取得した相続人だけですし、審査手数料など費用がかなりかかったりするようなので今のところお得な制度になるのかは何とも言えないようです。

そもそも案の内容から利用するための条件がかなり厳しく、実際に利用されるのはかなり限定的なのではないか、という意見も出ています。詳細はまた別に説明したいと思います。

その他にも改正された部分はいろいろあります。
相続登記義務化の施行と合わせて相続登記にかかる費用に対する措置として登録免許税の優遇措置などがかなり有力視されているようです。

相続登記義務化の施行は今のところ2024年の施行が有力とされ、住所氏名の変更登記はもう少し後の予定であるようです。

相続登記義務化対策としてやっておきたいこと

相続登記義務化施行後は速やかな相続登記が求められることになるため相続関係の把握や所有不動産の把握がまずは重要になるでしょう。

実務では相続人はもちろん被相続人も把握できていなかった相続人がいるケースもあり(便宜上行った養子縁組など)、きちんと調査するにこしたことはありません

このギモンの解説は

行政書士 勝見功一
行政書士 勝見功一
京都市上京区で申請取次行政書士をしています。
相続・遺言手続きの情報を中心に、情報の提供をしています。
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