【遺言の疑問】遺言書の種類?方式?

遺言書にはいくつかの種類があるようですが、どのようなものですか?

遺言書にはまず「方式」の区別がありますが、通常は「普通方式」とされる遺言方式を利用すると考えていただいていいでしょう。
「普通方式」の遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
3種類の中でも費用があまりかからず遺言書を作成する方だけで作成できる「自筆証書遺言」と費用はある程度かかるものの、遺言書としての信頼性が最も高い「公正証書遺言」の二つが主に用いられ、 「秘密証書遺言」 はほとんど用いられていません。


遺言の種類

遺言書にはまず民法の定める「方式」の区別がありますが、通常は「普通方式」とされる遺言方式を利用することになります。もう一つの方式に「特別方式」がありますが、死期が急に迫っている場合など特殊な状況下にある場合に例外的に利用される方式で基本的にはそうそう利用されるものではないと考えていただいていいでしょう。

特別方式の遺言について

特別方式の遺言についてここで簡単にまとめておきます。そうそう利用される遺言方式ではありませんので読み飛ばしていただいてもかまいません。

特別方式の遺言は普通方式の遺言ができない特殊な状況下においてのみ認められる遺言方式であり、「危急時遺言」と「隔絶地遺言」があります。
「危急時遺言」 は病気などで死期が迫っている状況で作成できる遺言、また 「隔絶地遺言」 は死期は迫っていないが伝染病であったり船の上であったり一般社会と隔絶した環境にある場合に認められる遺言です。

特殊な状況下で作成される遺言ですので遺言をするための要件がある程度緩和されています(特殊状況下で厳しい要件を求めると要件を整えている間に遺言者が亡くなったりする可能性があります)。ただ、作成時の要件は緩和されていますが、その分有効とするためには家庭裁判所で確認を受けなければならなかったり(危急時遺言)します。

また、 「危急時遺言」と「隔絶地遺言」 のどちらであれ危難が去り、遺言者が普通方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するときは、特別方式で作成した遺言は無効となることに注意が必要です。

普通方式の遺言

「普通方式」の遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、主に用いられるのは遺言者一人で作成することができ手軽であり、費用の負担のないことが魅力である 「自筆証書遺言」 。

費用が掛かり、作成にある程度の人数が関わることが必要ではあるものの、遺言としての信頼性が最も高い 「公正証書遺言」 の2つです。
もう一つはその中間のような 「秘密証書遺言」 ですが、実際には上記2つに比べて使いにくくメリットの感じられる場面が少ないためあまり用いられていません。

それでは一つづつ内容やメリットデメリットについて説明していきます。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は遺言者が、その全文・日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立します。遺言をする人が自分で内容と日付と名前を書いて、ハンコを押せば良いという最も簡単かつ手軽な遺言方式です。使用する紙や筆記具には特に制限はないのでいつでも自分が作成しようと思ったときに作成できる遺言書であることから利用者が多く、おそらく一般的な遺言書のイメージはこの 自筆証書遺言 ではないかと思われます。

ただし簡単とはいえ、自筆証書遺言は民法の規定に従ったものでなければ無効となってしまいます。そのようなことを避けるため、自筆証書遺言の作成方法についてはしっかりと確認することが重要であり、また作成後も内容・方式ともに法の規定に従ったものになっているか、よく確認しなければなりません。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは手軽に作れて費用が掛からないことが一番ですが、他にも一人で遺言書を作成することができるため、誰にも知られずに遺言書を書くことができ、遺言の内容を秘密にできるというメリットがあります。

ただしこの自筆証書遺言のメリットはデメリットとも表裏一体でもあります。

自筆証書遺言のデメリット

上記の通り自筆証書遺言のメリットはデメリットと一体のところがあります。手軽に一人で作成できますが、内容や方式を守れているかについて誰かに確認を受けたわけではありませんので内容あるいは方式に民法に違反するところがある、あるいは有効な内容でない可能性があるのです。
最近では遺言関連の書籍が多数出ており、それを使用すればこういったことも減少すると思われますが、書籍もすべてを網羅しているわけではなく、また第三者のチェックを受けたわけではないことは変わりません。

せっかく遺言書を作成しても無効では意味がない、ということになりかねない危険性は他よりも高いといえるでしょう。

また、誰にも発見されない危険や逆に誰かに発見され破棄されたり改ざんされたりする恐れがあることや、遺言の実行には家庭裁判所での検認手続きという手続きを要するところもデメリットと言われています。

自筆証書遺言書保管制度

2020年7月10日から自筆証書遺言書保管制度が始まりました。この制度は法務局が自筆証書遺言書を保管し、希望があれば予め遺言者が指定した者に対して、遺言書が保管されている旨を通知する制度です。また、この制度を利用した自筆証書遺言については検認手続き不要とされています。
この制度の開始により自筆証書遺言の保管や誰にも発見されない可能性というデメリットがかなり解消されると期待されています。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は遺言者本人が公証人役場に出向き、証人2人以上の立会いのもと公証人の前で遺言内容を述べ、公証人が筆記・作成する遺言方式です。
作成された公正証書遺言の原本は公証役場に保管され(遺言者には正本と謄本が渡されます)るので、滅失・改竄等のおそれはありません

公正証書遺言は公証人という役所(公証人は一人でも一つの役所です)が関与し、保管される遺言であり最も遺言として信頼性が高いためこれも利用者の多い遺言になります。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリットは、作成・保管の遺言者が生存しているときのものと、遺言者が亡くなってからの遺言の実現時のものがあります。
まず作成・保管時についてのメリットとしては、公正証書遺言の場合、公証人という専門家が関与するため形式・内容の不備についての不安がほとんどありません。また、保管の確実性についても同様です。また、自筆である必要がないため文章が書ける状態でなくても作成できます(名前は自署します)。

遺言の実現時のメリットとしては公証人が関与して内容を作成するためより相続人が納得しやすい内容になっている場合が多いことや検認手続き不要で銀行であれ法務局であれすぐに手続きができる点が挙げられます。

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言のデメリットとしてまず挙がるのが費用の点です。相続財産の金額に応じて公証人に手数料を支払う必要がありますし、証人の日当が必要となることもあります。

また、自筆証書遺言と違って基本的には公証役場に出向いて(手数料を払って公証人に出張してもらうこともできます)作成する必要があり、手間がかかるといえます。

先述の通り証人用意する必要がありますが、一般の方が証人になった場合、遺言の内容がそこから漏れる可能性も一応あります。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は遺言者が自ら適当な用紙に記載し自署・押印した上で封印用意した遺言書を2人の証人と同行して公正役場に持ち込み、公証人および証人立会いの下で遺言者と証人が署名押印し、遺言書の存在を公証人に保証してもらう形式です。特徴的なのは証人と公証人には遺言の内容は公開されないということです。あくまでも遺言書があるという事実を確実にするのが目的であり、内容の確認や保管を公証人がするわけではありません。
あくまでも保管は遺言者本人が行うのです。

また自筆証書遺言と違い、署名以外は自筆である必要はなく、代筆でもPCで作成しても構いません。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言のメリットは何といってもその秘匿性の高さにあります。証人と公証人が手続きに関わることになりますが、内容については一切知られることはありません。

また、署名さえできれば内容については代書でもPCで作成してもいいので文章を書くのが難しい場合でも遺言書作成を行えます。

秘密証書遺言のデメリット

こうして書くと秘密証書遺言もよさそうに思えるのですが、実際のところ上記以外にメリットといえるところがありません。

その一方で作成した遺言書に誰も関わらないため遺言の無効が起きる可能性が高い点は自筆証書と全く変わりませんし、保管に関連する誰にも発見されないことや破棄・隠匿の危険があることも自筆証書遺言と変わりません(改ざんはできませんが)。検認手続きが必要な点も自筆証書遺言と同じです。

そして公証役場で手続きが必要な点では公正証書遺言と同じであり、公正証書遺言よりは安くつくといえるでしょうが、手間と費用が掛かる点では同じなのです。

実際のところほかの二つの遺言方式よりも優れているといえる点が秘匿性の高さぐらいしかなく、実務ではかなりまれにしか用いられていないといえます。

結局のところどの遺言方式がいいのか

おそらくのところ遺言書の作成を検討している方が考えるのがこのことだと思われます。

一概には言えることではありませんが、やはり公正証書遺言を軸に考えるのがよいと思われます。自筆証書遺言も自筆証書遺言書保管制度が開始されたことによってある程度はリスクの軽減が図られたものの、遺言書の無効の可能性が軽減されたわけではありません(自筆証書遺言補完制度についてはまた別に取り上げる予定です)。

費用はかかるものの、作成した遺言の有効性についての安心感や遺言の実現時のやりやすさはやはり公正証書遺言にかなりのアドバンテージがあるといえます。遺言は実現されてこそのものだからです。

このギモンの解説は

行政書士 勝見功一
行政書士 勝見功一
京都市上京区で申請取次行政書士をしています。
相続・遺言手続きの情報を中心に、情報の提供をしています。
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